2019年10月17日

『儲からないのでやめます』

ガストロゼピンが製造中止となる案内が来た

IMAG2397.jpg簡単に言うと胃酸を抑える薬

私が生まれるより前、1981年に上市された胃薬
現在の中〜高年代の方の中にはこれを服用したことがある方も少なくないはずで、もちろん今現在も服用中の方だっているだろう、、
しかし今やH2ブロッカーやらPPIといった最新の薬剤を差し置いてでも使う意義は少なくなっており、製造販売中止についてはやむなし、といった感はある。
なんというか“一つの時代が終わった”と・・・

最近、そんなメーカー都合による医薬品の製造終了が相次いでいる
もちろん、売れないクスリが市場から、現場から淘汰されていくのは仕方がない。
しかし、個人的に“これは絶対に欠かせないだろう”と思える医薬品ですらもひそかに終わりを迎えてしまっている事についてはかなりの危機感を覚える

例えば少し前の“スローケー”
このカリウム(K)を補充するクスリが製造中止になったことが記憶に新しい。
さらに聞くところによれば、今度はサワイ社のカルシウム製剤も製造中止の一方が入っているとか。

もちろん、全メーカーが製造をやめてしまったわけではないから、今は残ったメーカーから仕入れればイイのかもしれないけれども。
でも、残ったメーカーも遅かれ早かれ製造をやめてしまったら?
我々はどこからこれらを補充すればいい?
カリウムだのカルシウムだのは、そうそう簡単に補給できるものではないぜよ?

・・・そもそもなぜ、医薬品メーカーは製造をやめてしまうのか?

答えはシンプル
『儲からないから』

売れていないわけではない。
徐放製剤(1日1回だけ飲めばいいクスリ)のスローケーなどは、かなりのシェアはあった(はず)
実際に、これらを手放せない患者さんにとっては販売終了の直前まで使用される(使用されていた)ことだろう。

しかしそれでも“儲からない”
なにせ1錠6円だから。
一箱100錠入りで600円、先発品でこれ。後発品では5.6円/錠
でもこれは駄菓子じゃない、れっきとした医薬品
だから然るべき順法の設備で厳密な管理の上で製造され、然るべき流通管理を受けて薬局に仕入れられる。
そんなコストを、1錠6円でどうやってペイするの><;

『私たちはボランティアではない』

・・・そんな製薬メーカーからの何ともやりきれない声が聞こえた気がした。
スローケーはノバルティス社という、海外の製薬企業の製品だった。
もちろんノバルティスにだって、医薬品を安定供給する!というメーカーの矜持はあると思う。
しかし別に、赤字を垂れ流してまで日本の患者さんを支えなければならないという道理までは無いのだろう、、
たぶん、こういうことはこれから他の薬剤でもドシドシとやってくるんじゃないか?
その時、国内は国内で必要な薬剤を確保できる様な体制は確保できているのかな(´・ω・`)
つまり公金でこういう非営利的な薬剤を保護できないものか、と一人ぼやいてこの件は終わりだ><!




ちなみに  (まだだ、まだこの話は終わらんよ´ω`)
この5円だの6円だのは、国が決めている公定価格。
例えばガストロゼピンは12.1円/円
対して最新の胃酸のクスリ、タケキャブは20mgが約197円
ガストロゼピンは3-4錠を一日に使うとしても4倍近い金額差が新薬にはついている。
その中には『新薬創出加算』という、国からの公的な奨励要素も含まれている。
言い換えると“新しい(効能効果を備えた)クスリ”には製造メーカーにはそれだけの見返りが用意されているということ。

また、今回終わりを迎えたガストロゼピンも、初めはもっと高い薬価がついていた。
しかしそれは毎度の“薬価改定”の度に減額(現在は2年おき、昔は知らない)され、今に至っている。
だから製薬メーカーは、折角新しいクスリを作ってもいずれは値崩れを起こしてしまうので、また高い薬価がつけられる次の新薬を開発しては、それが売れた分でさらなる次の医薬品開発を行う、といったサイクルを今まで回してきた。
我々もまた、その科学の進展を健康寿命の延長という形で享受してきた。
そう、今までは。
今までは経済も右肩上がりで、より良く効くクスリがあれば誰もがそれに飛びついたし、それで何も問題はなかった。

しかし今は、ハッキリ言って“最新のクスリを国民全員が使える”余裕はなくなってしまっている。
にも関わらず、【最新の薬剤に高値を付けて、さらに誰もが保険でそれを使える様にすること】を続ける意味はあるのかな-?
あるいはそんなこと、絶対にムリがあるのでは??

その一方で、カリウム製剤の様に“もう新しいものを開発してもどうしようもないもの”がどん底の薬価になってしまって、それで製薬メーカーが『もーやめた』となってしまったら、本当にどうしようもないと私は思うよ。

もちろん、胃酸過多は胃がんにも直結するのでより良いクスリを開発することには大儀があるし、胃酸のクスリが無数にたくさんあったから今回のラニチジン騒動でも回避先があったけれど、、
肝心のタケキャブについては“4週以上は使うな!”とか“8週以上は使うな!”とかケチがつきまくりな割にはそれを守っても治らない患者さんも少なかったりして
『いったいコレは誰のために開発されたんや』
と思うことは少なくない、、

保険医療制度について『薬局がもうけすぎている-』とか、色々と風当りも悪くなってきている今日この頃。
薬価の面で破綻が近づいてきている今、我々も血を流すことはやむなしとは思うけれど、、
しかし、言われている、思われているよりも実情はカツカツであると言っておきたいし、
ある一定以上に血を流すことになると、上記の製薬メーカーの様に『どう頑張っても儲からないのでやめます』という薬局が続出してしまうかな。

(ここでは説明しきれないけど)そうなると間違いなく“ヤバい薬局”だけが残ります…
(偉い人、その点どうかよろしくお願いします)

そして何が言いたいかというと
皆さん色々と考え方はあると思いますが、なるべくジェネリックを使っていきましょう、、
たとえ公費で負担がかからなくとも、たとえ上限に達するので負担金は変わらずとも、
なるべく後発品で医療費を抑えていきましょう
お家から残っている薬剤が出てきたら、遠慮なく申し出て今日処方してもらう薬をそれで調節しましょう


それが、皆さんが、あるいは皆さんの大切なお子さんがゆくゆく高齢になり、
いずれ癌、あるいは難病にかかった時に保険で抗がん剤治療を使えるための原資になる、と私個人は思っています


posted by うたまろ at 14:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 活動日誌

2019年10月14日

何が出来たか。何も出来なければ、何もせずで良かったか

後々振り返った時、何かの役に立つかも分からないので備忘録に書き留める

台風一過、しかし静岡辺りから東側は洪水被害が尋常ではなく、むしろ今からが大変なことは間違いない…

とはいえ、私がひき籠っていてどうにかなるわけではない。
幸いにも連休だ。
自分が自分の勤めを果たせるために、多少の気分転換をするために滋賀方面に遠出をしてみた。
帰りが遅くなるのは折り込み済みで、守山にできた新しいお風呂に入って一日が終わる…はずだった。

気付くと休憩場所でお婆さんが臥せっていた。
初めは単に“湯当たりか?”と思い、周りにはご家族もいるので“お年寄りには良くあることか…”と、ただ傍観するのみだった。

しかし時間が立てども一向に回復する気配がない
なんとなくただ事ではない予感がしてお節介に走らせてもらった
伺うと、『骨髄異形成症候群』で大学病院で加療中とのことだが、本来ならば輸血?を受ける予定だったところ、主治医とのご都合がつかず、少し先に延びてしまった事があるらしい

骨髄異形成症候群(MDS)…難病指定で疾患名こそは知っていれども、
実際の患者さんでお目にかかった事はなく、正直に言って無知に等しかった。
ハッキリ言ってこの時点で、いや初めから私は無力であった。

既に電解質と水分の補給も行われていた。
平熱で脈はすこし早いが力はあった。
呼び掛けにはやや時間差があるものの応えてくれる。
ただ、かなりしんどそうではあった。
分かったのはそれくらい。

後は考えるしかない。
この、ヒトより一回りデカいアタマは、ヒトよりも考えるために備え付けられているはずだ(-_-;)
そういえばここには、“炭酸泉”があった。聞くと炭酸泉、好きらしい(そもそも温泉に入って大丈夫だったのか?)

炭酸…つまりco2
皮膚から吸収されてco2↑、o2↓もちろんそこからホメオスタシスが働いて正常に戻ろうとするが、骨髄異形成では、ヘモグロビンがほとんど機能しない様だからどうだ?
あとは血管が開いて血圧↓にもなるらしい

…このあたりか?
もし救急車で呼吸器を当ててもらえたら、回復するかも??
あるいは、原疾患の急性増悪
それはもう、私には未知の領域

『…救急車を呼びましょう。幸い、周辺数キロ内に救急を受けている所が複数あります』

横臥位が良い、と何となくだが思った。
救急のストレッチャーがエレベーターに入れるかも確認した。
出来ることを考えた、試した

ほどなくして、救急隊の方々が駆け付けてくれた。
…酸素濃度は94くらい。少し低いが、90を超えたらこんなものか?
また心拍は脈は若干速いものの、波形は異常なし(邪魔にならないようにモニタを覗かせてもらった)
隊員さん曰く、『循環器の異常ではありませんね…』とのこと。

…あわわ、やってしまった?

とんだ取り越し苦労だったかもしれない。
もしかしたら、後少し横になっていたら、お婆さんは回復していたかもしれない。
しかし救急搬送された以上は、家族の誰かは付きっきりだ。
せっかくの連休であればオジャンになってしまった、、

しかしもう、こから先はプロに委ねるしかない
つまり
“ここから先の顛末はもう分からない
厚かましく『この後どうなったか教えてください』と聞くなんてとんでもない

クスリが無きゃ何にも出来ないくせに乗り込んで、
“医療従事者です”を盾にご家族を説得して救急を呼んで貰った事、、
それが正しかったか、間違っていたかは恐らくもう永遠に分からない。
だからほとんど反省が出来ない

唯一自分に出来るのは、また“いつか”に備えてもっと知見を積んでおくこと
その“いつか”があれば、次は“もっと上手くやる”ために

あとは自分の自己満足のためでもあるな。
守山の水春のスタッフさんは忙しい中にも関わらず、思い付く限りの、精一杯の対応をされていて素晴らしかった。
それを尻目に、あのまま何もせずに帰路についていたら…その時はもう、自分は医療機関には勤務出来なかったろう。
そんな、自分のアイデンティティーを守るための行動でもあったと振り返る。

答えが気になって眠れない
杞憂(大した事はなかった)であって欲しいし、このお節介が正解であっても欲しい
このなんとも矛盾した気持ちはしばらく胸の内にしまっておこう。




posted by うたまろ at 02:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 活動日誌

2019年10月12日

迷わずトロッコのレバーを引く

関東は各所でダムが満水
そして今、ダム決壊を防ぐために緊急放流が始まろうとしている…

下流はただでさえ水位が高く、
さらなる放流が襲えば避難しないを選んだ人々は少なかれ死ぬ
しかし、だからといって放流しないを選べばダム決壊で結果としてもっと多くヒトが死ぬ…

これがまさに“トロッコの問題”
ついこないだ小学生に出題して問題視されていた思考実験

以前にも書いたかも知れないが
私がこれを決めないといけない立場にあったとしたら、躊躇いなくスイッチを押す

躊躇わないことはないか、でも間に合わなくなるギリギリまでには必ず押す

なぜなら、それは薬物治療も“同じ”だから。

最近のクスリは優秀で、正しく飲めばおおよそ期待した効果が得られる
しかし一方で、副作用が出ることがある。
あるいは副作用とはまた違う、ショックなどが出て死に繋がることが起こりうる。

では、クスリを使わないかと言えばそうじゃない。
あくまで“可能性”があるが、その確率の低さやメリットの大きさから我々はクスリを使う
もう、クスリを使わない時代には戻れないのだ

しかし死亡確率はゼロではない。
ゼロでない以上、それは必ずどこかでは起こる。
それがたまたま自分や目の前の患者さんではないから無事で済んでいるが、
我々が進んでクスリを使う文化を選択している以上は、
やはりどこかで誰かが人知れず死んでいる…

そういう世界で生かされている(自分自身もクスリの恩恵に与っているし、それがメシの種になっているという二重の意味で)以上は、
私は『多数を生かすために少数を切り捨てなければなれない決断』をハッキリと支持します、、

今から始まるダム放流の責任者は、死者◯◯人とカウントされた犠牲者を背負っていかなければならない。
でもそれを、誰も責めないことをただただ祈りたい。
誰にも責めることは出来ないよ。
いるとすれば、犠牲になってしまった当人かな…

posted by うたまろ at 22:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 活動日誌

目が消えたかも

衛生写真で台風の動きを見ていたら
日付が変わるか変わらないかの辺りで急に北上して、
そして目が見えなくなったね!

これは移動でエネルギーを消費された証だね
案外、被害は小さくなるかもしれない