2025年04月01日

なぜ他者に親切にしなければならないのか

『なぜ、そこまでする必要があるんですか?』

…と疑念をぶつけられることがあった
そこまで、というのは例えば他者へのちょっとした気遣いであったり、親切さであったり

むしろ『なぜそれをしないで良いと考えられるのか?』
『“そこまで”と言わしめるほど困難なことなのか?』
などと逆に質問を投げかけたくもある(というか実際に投げかけてもいる)が、まずは聞かれた事について答えねば

理由としてはいくつかあるが、理屈が好きな人でも納得しうるであろう大きなものを二つほど

まず一つは【自身の幸福度の増加】があげられる
ヒトは“他者に力を貸したり感謝された時、ドーパミンやオキシトシンなどの幸福系ホルモンが分泌されるように作られている”ので、ただ粛々と自身の利益を追求する利己的な人よりも、他者の利益について考えて行動できるヒトの方が人生における満足度が圧倒的に高まる

もう一つは【他者を助ける自身がいずれ他者に助けられる、引き上げられることになる】ということ
ヒトは“他者への親切行動がとれるヒトを高く評価するようにできている”ということ
例えば自分に部下がいて、“一切他者を慮らないヒト”と“他者への慈しみがあるヒト”の二人のうち、
どちらに大切な仕事を任せたいと思うか
他者への献身性が高い人は、逆に自身に困難があったときでも過去の親切が回りまわって直接ないしは間接的に還ってくる可能性が極めて高くなるようにできている

…といくつか根拠は挙げてみたが、そんなことよりも次の言葉がすべてを指示している
『情けは人の為ならず』
言わずもがな、他者を慮ることは何より自分自身のためになりますよという古えからの格言だ

そのほかにも昔から日本には恩返しの文化もあり(同時に“自己責任論”などの因果応報が強すぎるという負の文化もあるが)、他者に与えられるヒトは持ち上げられ、与えられるばかりのヒトは低く評価されがちだ

もし自身が誰とも接しない孤独の道を進んでいるのでないのであれば
『他者に親切にするメリット』が理解できなくとも、せめて
『他者に寛容になれない(と、他者からの評価がついてしまう)ことによるデメリットの怖さ』について理解できればひとまずは良いのではないかと思う、、
posted by しょうたろう at 19:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 活動日誌

2025年03月07日

なぜ駐車場は溢れるのか

薬剤師というのは、ロジスティクス(物流)についても多少の心得がなければならない
何故ならば、ヒトに対して外部から投与される薬物動態について、その吸収と吸収後の拡がり方(分布)、分解や変化(代謝)、排泄までを包括的に考える必要がるからだ
それは正しく工場に材料が流入し加工されて商品として出荷されていく流れ、あるいはそのために工場に入っては出ていくトラックなどの流れと通じているのだ
…といったことなどからふとインスピレーションが湧いたのでちょっとしたショートストーリーをしたためてみた

僕は新人コンサルタントの加峯 桃李(かほう とうり)
今回のクライアントは街の中心から少し離れた場所に庵を構える人気の【霊能力者】だ
曰く、【子どもに特有の霊障を払うのが専門】であるため車での来訪者が多く、時に駐車場から顧客の車が溢れ出て付近の生活道路をふさいでしまい【近隣住民からのクレームが絶えず困っている】のだとか
事前の【関係者へのヒアリング】により要点を整理してみたところ、
まずクライアントは完全予約制で顧客の相談を受けており、【常に一時間あたり16人前後の相談者で予約がいっぱい】らしい
また一風変わっているのが敷地の隣に【風水オミヤゲ屋】なる施設があり、場合によっては霊媒師が処方する“風水グッズ”を用意してもらいそれを受け取って帰るのだとか
なおオミヤゲヤにおける待ち時間は4-5分程度らしい
なぜ自分の庵の中で一続きにそれを渡さないのか?と聞いたところ「そうすることは風水上の問題がある」のだとか
そして改めて言うまでもないが“これ以上駐車場を増やすことはできない”とのこと、、
さて、クライアント宅についたぞ

『先生、初めまして』
「やぁ、カタくるしい挨拶は抜きにして早速本題だ。
どうしたら路駐はなくなる!?私はね、隣の【風水ミヤゲモノヤがお客を帰すのが遅い】と思っているのだよ!
あげくには【路駐をしないように一緒にお客に呼び掛けていこう!】と提案した時には【出来ないことはありませんが、その効果はどれほどありますか?それを毎回聞かれるお客の立場はどうですか?】なんて返してくるんだ。まずはやってみればいいことなのにな!!」
『まぁまぁ、先生。逸る気持ちもわかります。…が、まずは何点か伺いたいと思います』
「うん、いいよ」
『“路駐が多く発生している”とのことですが、ちなみにその際に駐車場は満車なのでしょうか?』
「満車のこともあれば、そうでないこともある」
『では先生、まず今回の問題を二つに分けて考える必要があります。
@停められるのに止めない(顧客のモラル欠如の問題)と
A空いていないから止められない(運営上の問題)とです。
ちなみに先生の場合、どちらが多いのでしょうか?』
「…@もあるが主にAだろうな」
『左様でしたか。確かに@であれば、初めに先生が仰られた【直接注意を行う】というのもの一つの手段かもしれません。
しかし主としてAというのであれば【お隣のミヤゲモノヤと一体になって声かけをすることは根本的な解決にはなりえない】のではないかと考えられます。むしろ場合によっては【通常業務の妨げとなってしまいお客の滞留時間を却って引き延ばしてしまう可能性】すら考えられます』
「そんなものかね?」
『えぇ、そして@の場合も、そもそもモラルに乏しい方々を相手にするわけですが、そういった方々に大切なスタッフさんを直接向かわせることは差し障りないでしょうか?ちなみに施設警備員等を配置するご予定は』
「今は…無い」
『…かしこまりましたが、また新たなリスクとなり得るためご検討いただきたい事柄です。次いで本命のAに移りますが、先生の駐車場では最大で何台の車が停められるのでしょうか?』
「ウチでは少なくとも10台は駐められたはずだ」
『ではひとまず10台で考えましょう、ちなみに全てのお客が車でお越しになるのでしょうか?』
「およそ7割強くらいの割合で車だろうか。私が得意とするのは子どもに特有の霊障だから、患児を連れてくるには車が欠かせない。ただ自転車や徒歩で自力で来られる相談者も少なからずおる。」
『なるほど、、では改めて【1時間に約16人の相談者がいて、そのうちの7割強、12人くらいはお車で来訪している】という前提で解決策を考えていきましょう』
「うん」
『‥しかしそうなると不思議な点があります』
「不思議な点?」
『ええ、1時間は60分、、そこに16人のお客ですから1人あたり4分未満が割り当てられる計算です。先生は相談者さんの問題をかなりのスピードで解決されているようですね?』
「・・・そうでもない」『えっ?』
「どの種類の悪霊に取り憑かれたかを調べる必要があったり、霊障に深部まで侵された人に聖水を持続静注することもある。
一人当たりに均したら倍の6分くらいかかっているかもしれない」
『そうなりますと、先生の実際の1時間あたりのクリアランス(処理能力)は約10人程度ということですね』
「・・体感的にはちょうどそれくらいかな」
『16人に対して10人となりますので、率で言えば62.5%です。
先生の診療が1時間進む時、患者さんベースではまだ6人が、車ベースでは4-5台が残ってしまっている計算です。
…先生、これはハッキリ申し上げてマズいです』
「そうかな?」
『仮に先生が13時からお仕事を始められますと、1時間後の14時時点で駐車場には4.5台が残り、さらにその1時間後には新たに増える12台の返しきれなかった分と合わせて6台が残ることになります』
「ふーん、ならば16時には8-9台でそろそろ駐車場に限界がくるのか。ウチは18時前までの予約だから、最後をなんとか凌げば乗り切れるんじゃない?」
『いえ先生、これはあくまでも【理論上の最終的に残る台数】なのです。十分な駐車場があり詰まることなく流れてようやく実現する数値です
例えば14時の時点では4-5台がふさがっていて、ここに次の12台が順次やってくるのですから、もうすでにこの辺りから予約順が狂ってくるのではないでしょうか』
「たしかに、予約時間でも来ない人はいてそういうのは後回しにしていたが…来ていないじゃなくて【入れない】だったのか」
『はい、そして患者さん視点で考えてみましょう。時間に合わせてきても満車で入れない、すると』
「…早く来ようとする」
『…その通りです。ましてや【後の時間の予約者に停められてしまうと診療そのものの時間も追い越されてしまう】となると、個々が自身のために採る行動は【早く来ようとする】の一択となってしまうのです。そしてこれが必要以上の混雑を生んでいる気がします』
「むむむ、、隣のミヤゲモノヤがお客を帰すのが遅いせいではなかったのか」
『全く関係がないわけではないですが【先生の診療時間>ミヤゲモノヤでの滞留時間】となっている限りは、改善すべきボトルネックは先生の方となるでしょう』
「・・・」
『一旦まとめましょう、これまでから考えられる改善案は次の二つです
@【早い者勝ちの禁止】・・・改めて駐車場警備員を配置するとともに、予約時間に沿ったご対応をすることを提案します。予約よりも早すぎるお客様にはいったんお帰りいただき、あるいは予約より大きく遅れた方については予約を取り消すなどの厳正な運用をしていただくことです
A【予約枠の縮小】・・・現状、クリアランスを大きく超えた予約によりキャパを超えてしまっています。これを縮小し…』
「いや縮小は出来ない」『しかし』
「私が枠を縮小すればどうなる?他の霊媒師たちではどうにもならず、それで私を頼ってくる患者さんたちは誰を頼ったら良い!?」
『そのお気持ちは分かります。ではAをこう代えてみましょう
A‘【自動車来客枠の縮小】・・・お車で来られる方を、1時間あたり8台までに限定しましょう。本当は今の半分、6台くらいに留めたいところですが』
「なるほど、車の数を減らすのか。車の枠は早くに埋まってしまうが、自転車できたりバスやタクシーで来るようにするとある意味では優先的に予約が取れるようになるのか。悪くない
新人とは聞いていたが、なかなかどうしていい切り口じゃないか」
『…実は』
「?」
『今回のご提案は私が、というよりはお隣のミヤゲモノヤさんよりいただいたものが主軸となっておりまして』
「…」
『お隣さんも、決してこの問題を他人事とは思っておりませんでした』
「…あいつめ。分かった、前向きに検討したい」
『ありがとうございます』

〜Fin〜

posted by しょうたろう at 01:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 活動日誌

2025年03月04日

プロであり続けるために、別れを告げるべきもの

いっぱしのプロを自認する前に済ませておく必要があるのが“承認欲求”との別れであると思う
承認欲求は“マズローのアレ”でいうと衣食住満ちた後、同じ道を志す仲間との交流が盛んになってきた頃合いで首を擡げだす、バイアスと並んで厄介な感情の一つだ

もちろん、承認欲求の何もかもが悪ではない
「誰かに認められる仕事がしたい!」
…そんな動機が自分を引き上げてくれるフェーズは確かにある
「ようやく誰かに認めて貰えた!」
…そうして得られた自己肯定感が自分の下支えとなってくれるフェーズも確かにある

…が、やはりプロとしてより高みを目指したいのならばこれらはあくまでも補助燃料だと割り切り、ロケットの如く最終的には切り離さなければならない

切り離しに失敗するとどうなるのか?
“プロとしていい仕事が出来て、結果として承認される”
…のではなく、“誰かに認められることそのものが目的になってしまう”という目的と結果の逆転が起こったり、
「私を承認しない◯◯はおかしい」
…などと認知バイアスを起こしたりしてしまう


posted by しょうたろう at 03:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 届くまで叫び続けるコトバ

2025年03月01日

確証バイアスとエコーチェンバー

久しぶりの更新(まだ、覗いてくれている方はいらっしゃるのか??)
今日は“確証バイアス”について
確証バイアスとは簡単に、「自身の思い込みに支配されるがまま、それを否定するような情報が入っていかない状態」などを指す
総じてバイアス(≒思い込み)は医療ミスと関連が強いため、折に触れて取り上げて来たが…
この確証バイアスは数あるバイアスの中でもとりわけ独力で認知(解消)することが難しいものではないかと個人的に感じている
この確証バイアスがベースとなり、さらに状況を悪化させるのが“エコーチェンバー現象”だ
例えば現代ではSNSがあり、そこで自身に近い意見を持った相手と相互にフォローし合うことはよくある事だが、閉じられたコミュニティ内で偏った意見ばかりが反響するような環境にどっぷり浸かっているうちに最初に挙げた確証バイアスがより強められてしまうことがある

もっと簡単に言えば“はだかの王様”がまさにこれだ
「王様、こちらはバカには見えない生地で作りました衣服でございます」
「う、うむ、素晴らしい生地だ。なぁ皆のもの️」
「さ、作用でございます」
「大変お似合いでございます!」

始めは疑念があったとしても、ソレを肯定する集団に囲まれてしまえば見えない服を来て外を歩いてしまい、子供たちに笑われるまで
それを“恥ずかしい”とすら思えなくなってしまう

…はだかの王様はまさにエコーチェンバーを体現した寓話であると思う
とりわけ
「イエスマンたち」
「外界と接触しない環境」
などがエコーチェンバーを加速させる要素であると、ヒントを与えてくれている

トップが絶大な権威を持つ閉鎖的環境、、
なんとなく、ただなんとなくだが
“医療機関”がその一つとして浮かんでしまった(笑)
「貴方がおっしゃる通りです」
「イエスイエス!」
…そういった環境でヨイショされるのは大変にキモチイイ〜のかもしれないが、しかし一方で確証バイアスにどっぷりハマっていくリスクがあるということを肝に銘じておきたい

おさらい
確証バイアスに陥らないコツ
@常に自分自身を疑う
自分が誰かに押し付けがちな「常識でしょ?」ってことが実は非常識であるという可能性を考えること
A自分とは異なる考えを持つ相手の話こそ聴く
自分にNOを言える相手こそ大切にする。そこからの「それっておかしくないですか?」という讒言以外に貴方をエコーチェンバーの沼から引っ張り上げてくれるものはありません


…以上!

posted by しょうたろう at 18:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 届くまで叫び続けるコトバ